物体が激しく動けば摩擦が大きくなるように、人間だって、激しく動けば熱を持つのだ

ビートたけし / 北野武ビートたけしは、やっぱりすごい。

生死、教育、人間関係、作法、映画の側面から社会の腐蝕を斬ったエッセイ『全思考』(幻冬舎文庫)を読んだ。粋な江戸っ子らしい感性で、物事の本質をズバズバ突いている。それは毒舌の漫才師というより、哲学者のよう。

そんな社会時評よりも僕が引き込まれたのは、スターであるがゆえの人生、本心を吐露するところ。以下抜粋。

物体は激しく動けば、それだけ摩擦が大きくなる。人間だって、激しく動くと熱を持つのだ。

はたから見れば、輝いている人間のことが、きっと羨ましく見えるのだろう。だけど、輝いている本人は熱くてたまらない。

星だって、何千光年という遠くの地球から見れば、美しく輝く存在だ。「いいなあ、あの星みたいに輝きたい」人はそう言うかもしれないけれど、その星はたまったもんじゃない。何億度という熱で燃えている。しかも、燃え尽きるまで、そうやって輝いていなくちゃいけない。

これは真面目に、結構辛いことなのだ。

ビートたけしが努力家であることは世間的に意外と知られていることだろう。その努力は賞賛されてしかるべきだと思うけれど、ビートたけしのすごさは、このまま燃え尽きる覚悟でいるところではないかな。

本では、芸人なんか目指さずに普通が楽だったんじゃないかとも述べているが、もはや星は大きくなってしまった。気の毒だけれど、運命を受け入れてほしい。

Photograph/PHOTOZOU